電子機器の製造工程では、機器の誤作動や破壊・破損につながる静電気放電や静電吸引の防止は必須であり、 帯電物の帯電電荷を中和する除電装置としてイオナイザ(図1,図2)が広く用いられています。しかし、イオナイザの制御規則は製造者の経験則により構成されることが多いため、十分な除電速度および残留電荷抑制効果を得ることが難しい場合も多くあります。
放電電極への塵の付着や劣化によるイオン生成量の変化や、対象物と電極の距離、 周囲の温度・湿度,除電対象物の材料的変化などによる除電特性変化に対応して、状況に応じた適切な制御規則を適用することを目的として、弊社ではイオナイザに除電特性学習機能を与えるソフトウェアを提供しています。
図1 イオナイザ
図2 イオナイザの回路図
図3は人工知能を用いて除電対象物の電位変化を予測した結果です。
0秒時点において人工知能が予測した電位変化と対象物の実際の電位がよく一致しています。
図4はこの予測を用いてイオナイザを制御した結果です。0.176秒時点において、
「人工知能は0.22秒付近で除電対象物の電位が0となる」ことを予測し、制御モードを切り替えています。
この予測による制御モードの切り替えにより、対象物電位を早く確実に0に収束させることができます。
本成果により、従来法による除電時間を63.2%-70.7%削減することに成功しました。
図3 人工知能による予測結果
図4 人工知能による制御結果